5、9月25日(土)
起床(0500)グラーツ・ホテル発(0820)列車(0926~1158)昼食(1230~1335)シェーンブルン宮殿(1406~1530)免税店(1554~1635)美術史美術館(1653~1740)シュテファン寺院前(1750~1810)ホイリゲ(1900~2010)ホテル着(2050) ホテル:ルネッサンス 320号室
5-10-1 階段吹き抜け
入り口を入ると、今日のイベントの準備が行われていて、階段が少し狭くなっていたが、その横をする抜けて正面の階段を上がった。
順番待ちで少しそこで待たされた。
ここは吹き抜けになっていて、この上に有名なカフェがあるそうだが、今回は関係ない。
この階段は、19世紀後半にフランツヨーゼフ一世が大金をはたいて芸術家を雇い入れて造らせたものだそうだ。白と黒の大理石は、ピレーネ山から運ばせた本物。ただしそれ以外は人工のもの。
そこには、カノーヴァ作の「ミノタウルスを討ちとめるテセウス」の群像がある。
円天井にはムンカーツィー・ミハーイの「ルネッサンス賛歌」があり、その下には19世紀ウィーンの画家マカルトと若きクリムト兄弟による装飾画が描かれている。アーチと柱の間にあるエジプトっぽいのがクリムト兄弟の壁画。
ただ、照明の関係と、階段で並んでいるという条件の悪さで、全体を堪能するまでには至らなかった。
5-10-2 ピーテル・ブリューゲルの部屋
この美術館では最も重要な部屋。彼の作品11点が展示されている。
まず、「バベルの塔」。旧約聖書に出てくる有名な場面。塔が中央にどかんと描かれており、それを取り囲むように後ろの奥行きが表現されている。人の大きさは1cmほど。その大きさでも、一人一人の作業の様子が生き生きと表現されている。徹底した細やかさで細部まで描いているので、それを確かめてみるのが面白い。
手前に厳しい表情をしているのがこの塔を作ることを命じた王の姿。人間の傲慢さを描いている。
次は、「雪中の狩人」。他の絵は明るい色を使っているが、これはやや暗い感じの色を使っている。獲物が捕れなかったので、犬も人もしょげかえっている様子が見える。何しろ犬は14匹もいるのに、獲物は1匹しかいないのだから。
でも、奥の方には村の風景があるが、皆、生き生きと自分たちの生活をしている。氷上で遊んでいる子供たちには元気が見られる。人間のありのままの営みが表現されている。
また、ガイドさんによるのだが、4本の木を注目して見ると、右から見るか左から見るかによって見え方が違っているという。確かにそのようだ。
この絵は、彼の編み出した鳥の遠近法によって描かれている。つまり鳥の目線になって上からの視点になっているそうだ。
次は、「農民の踊り」。つらい農作業から解放された喜びを表現している。これはこれまでの高い視点と違って、人の位置と同じ目線から描いている。彼自身、農民の中に入ってその生活をつぶさに観察して描いたのだそうだ。これが、「農民画家」といわれるゆえんである。
次が、「農家の婚礼」。これも細部を細かく表現している。婚礼なら花嫁が中央に来てもおかしくないが、画面の奥に小さく描かれているにすぎない。代わりに、スープに手を伸ばす若者、食事を口にする女、酒を酌み交わす農夫など、人の旺盛な食欲を中心に描かれている。人間本来の姿を凝視して表現しているといえる。
また、ガイドさんによると,スープを運んでいる前の人の足が3本に見えるのは、彼独自のユーモアだということだ。
他にも「子供の遊戯」「謝肉祭と四旬節の喧嘩」などの作品が見られる。
部屋は違っているが、彼の息子の作品もある。
二男のヤンで、彼は静物画、特に花の絵を得意として「花のブリューゲル」と通称されている。光の当て方に工夫が見られ、ガイドさんによるとゴッホのひまわりにも相当する出来映えだとか。また、今でもこのように色が鮮やかなのは、彼自身が作り出した絵の具が素晴らしいせいだそうだ。
5-10-7 イタリア・バロック美術の部屋
カナレットの手による「マリア・テレジア」。その左右の下にある絵が、シェーンブルン宮殿。これはこんな所ですという紹介をするために描かれたものだそうだ。
グイド・レーニ作「イエスの洗礼」。これは初期のバロック作品。イエスとイエスに洗礼をするヨハネが描かれている。イエスが洗礼を受けると、天が開き、神の霊(聖霊)が鳩のように、イエスに向かってきたことを表している。
ルカ・ジョルダーノ作「大天使ミカエルと叛逆天使たち」。大天使ミカエルの動きがまさにそこで今動いているように力強く描かれている。また突き落とされる叛逆天使らの表情は深い陰影による光と影のコントラストで苦悶と恐怖が見られる。これは盛期のバロック。
「十字架から下ろされるキリスト」。作者の名が聞き取れなかった。これは後期バロックの作品。一瞬動きを止めたような構図になっている。
もう1点。指を立てて天を指す,同じような絵は何度か見ているのだが、誰だったか思い出せない。
5-10-8 ベラスケス
スペインとオーストリアはその頃同じハプスブルク家だったのだが、系列が別なために、常につながっているようにと結婚政策がとられた。
これはスペインの王女マルガリータ。スペイン王フェリペ4世の長女マルガリータ・テレサは、早くからオーストリアのレオポルト一世と結婚することが決められていたため、婚礼まで定期的に肖像画が贈られていた。成長の様子が分かるようにということ。
ここにあるのは3歳(薔薇色の衣装を着ている)、5歳(白いドレス)、7歳(青いドレス)の時のもの。3歳のあどけない表情から、7歳の不安げな表情を見せるまでに成長した様子が分かる。これは「青いドレスのマルガリータ王女」の題がある。
7歳の作品は、一度紛失したとされていたが、1923年に楕円形に切り取られた形で再発見され、1953年の大規模な修復によって元の寸法に戻った。なおベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画は『ラス・メニーナス』を含め、6点が現存している。
また、4歳で亡くなったというフェリペ・プロスペロ皇太子(弟)の絵もある。
5-10-10 その他の作品
見学中にもうすぐ閉館になるという放送があったので、後は急ぎ足で通り抜けた。
カラヴァッジョの「ゴリアテの首を持つダヴィデ」やアルチンボルドの一連の作品も見たかったのだが、かすりもしなかった。
とにかく駆け足で忙しい見学だった。一応ポイントの絵を解説してくれるのだが、次から次で全く時間が足りない。下調べをしていったのだが、あまり役に立たなかった。
最後に本屋で、解説書を購入。外へ出ると雨が降っていた。集合時刻を1分ほど過ぎていたが、誰もおらず、雨の中を探し回る。しばらくして添乗員が迎えに来る。バスが来ているわけでもないのに、なぜ待たぬ。現地ガイドは皆を連れていってもかまわないが、添乗員は集合場所で待て。
5-12 ホイリゲ(1900~2010)
オーストリアの居酒屋と言ったところか。小さな村にそういった店が並んでいる。狭い道には車があふれていて店に着くまでが大変だった。が、待てよ。この車で来ている人たちは飲酒運転にならないのか?そんな心配をしてしまったが、結構観光バスも多い。つまりはそれようの場所なのかも知れない。この頃には雨がさらにひどくなった。
ようやく1件の店に着いた。奥には既に他の団体が来ていた。
居酒屋と言ってもメニューは決められている。要するに宴会料理だ。グラスワインも一人1杯ずつ付いている。元々は、新酒のワインを振る舞う店だが、通年営業しているので、今は「ホイリゲ風」という表現になっている。
さて、本日のメニューは、サラダ、スモークポーク、ローストポーク、アップルシュティール、グラスワイン白付き。我が家は当然ワインを追加、白(3€×2)。
ここにはバイオリンとアコーディオン、二人の楽隊がいて流しのように各席を回る。リクエストしたらチップを渡してください、とあらかじめ言われていたのだが、騒いでいる人たちは次々とリクエストするのにその気配はなく、我が家と同席の人が、顔をしかめていた。添乗員さんがリクエストしてチップを払っていたが、流しさん可哀想に。
帰りもまだ雨は降り続いていた。